蔵王のオカマ

蔵王のオカマ

蔵王にて

今回の山形行はAさんと佐藤さん、私が新幹線を利用しました。
I君、そして松井夫婦が車で朝4時に出発して9時半頃には山形に到着していたようですが、途中茨城県内が大雨で大変だったようです。

山形市の天気予報では曇りでしたが、時より強い日差しがさす良いお天気で、河原では羊さんがまるまる1頭クシザシにされ火にあぶられています。皆思い思いの場所で話しをしたり、バーベキューをしたりとくつろいでいます。

合流した私達もさっそく大勢の中にまじり、飲んだり食べたり、騒いだり。前日に「Aさんのあ・し・あ・と」を皆に紹介しておいたので、沢山の人がAさんのに声を掛けてきてくれます。

Aさんの車椅子には後ろにクラッチを括り付けられるようになっています。クラッチを取り付けると腕を通す輪の部分が2つ丁度Aさんの頭のところに来ます。ふと見るとその輪の部分がカップフォルダーにそっくりなのです。
私は片手にコップ、さらに片手に紙のお皿、首からカメラをさげていますから、このままでは写真を撮ることも箸を持つことも出来ません。そこでAさんのクラッチにコップをさしてみるとこれがまた丁度よく収まるのです。それを見ていたAさんも自分のコップをのせて喜んでいます。
集まった人達もみな面白がってクラッチにコップを載せてみます。Aさんが「これ私の足なの」といっても皆マイグラス置きだねと笑っています。車椅子で外に出ることが多くなればアタッチメントでテーブルやカップフォルダーが簡単に取り付け、取り外しが出来るようになると便利かも知れません。

Aさんの車椅子の後ろに縛ってあったクラッチはいつの間にかカップフォルダーになっていた
Aさんの車椅子の後ろに縛ってあったクラッチは
いつの間にかカップフォルダーになっていた

13時頃、佐藤さんも石塚君も山形は初めてということで何処か遊びに行こうという話になり、蔵王山頂は雲がかかっているのでおそらく見ることは出来ないでしょうが、折角なので行くことを提案しました。

Aさんの車椅子を後ろに載せ、出発です。車に搭載されている外気温計は34度をさしていましたが、坂を登につれてどんどん下がっていきます。木々も高度が高くなるにつれて背の高いものは姿を消して、背の低い樹木だけになります。車の窓を開けるとウグイスなどの鳴き声がすぐ近くに聞こえます。

山頂の手前のところにお釜への道と宮城県側へ降りる道があります。蔵王エコーラインそのものはずいぶん昔に無料になりましたが、山頂へ向かうには左に折れて料金所で500円を支払います。
ここで「障害者割引は有りますか?」と尋ねるとやはり「手帳を見せていただければ大丈夫です。ここでは障害者有料道路通行料金割引証は必要有りません」と、いわれAさんの手帳を提示しました。料金所のおじさんは手帳の写真とAさんの顔を見比べて、「奥様ですね。では250円です」。一同何も言えず私も料金を支払って車をスタートさせました。料金所を過ぎてから車の中で大爆笑!佐藤さんは、「石塚君の手帳出したら”お子さんですね”と、いわれたかな」なんてそれはそれは大騒ぎ。

でもこの頃から外は雨風が強くなり嵐の様相です。私はライトを点けて最後の坂を登っていきます。駐車場についても車から降りることが出来ないほどの大雨です。でも山頂のレストランから傘もささずにびしょぬれで帰ってくる人がいるところを見ると突然降り出したようです。
しばらく車の中で我慢していると雨と霧がはれてきて、私達が停めた駐車場より1段高いレストラン脇の駐車場に車椅子用駐車場が有るのが判り車を移動させました。

そこで石塚君とAさんにはかっぱを着てもらい佐藤さんと私は傘をさして車を降りました。すれ違う人達が「口々にお釜が見えた」と話しているので半信半疑で山頂のお釜を目指します。レストランは真新しい建物に建て替えられており車椅子用のスロープや自動ドアが完備されていましたが、山頂側の出口は5段程度の階段でした。でも佐藤さんが車椅子を後ろ向きにしてそのまま後輪を使って降りていきます。さすが!

その先しばらくは舗装されている急な坂道ですが、すぐに砂利道になります。佐藤さんは車椅子の小さな前輪を持ち上げAさんの体重を後輪の中心に持ってきてそのまま進んでいきます。砂利道というより、火山の噴火口らしく岩がごろごろ、土もでこぼこしています。そこをまるで砂やセメントを運ぶ一輪車を押すような要領でどんどん登っていくのです。もし私だけだったらこの時点で諦めてAさんを抱えるか、車椅子ごと持ち上げて運ぶことを考えたでしょうが、こんな方法が有ったのかとビックリしてみている私に「車椅子の前輪は障害物がある場所では邪魔になるだけですから後輪だけで押すと楽なんですよ」と解説してくれました。

砂利道など悪路では車椅子の全輪を持ち上げると押しやすい 砂利道など悪路では車椅子の全輪を持ち上げると押しやすい

さて登り切っても、すこし降りないとお釜は見れません。まだ霧がかかっていてお釜が有る場所すら見えませんが、車椅子を押しながら下っていきます。しかし巨石奇石が増えてきてさすがの佐藤さんもこれ以上進むのは危険と判断しまし立ち止まったときです。突然風の向きが変わって目の前の霧がどんどん晴れて行き、私達の目の前にコバルトブルーのお釜が姿を現しました。

なんて運が良いのでしょう!私も10回ほど来ていますが、3回しかお釜を見ていません。地元の人は何度も来ているのに1度も見られてことはないという人もいます。
Aさんは初めて蔵王に来てお釜を見ることが出来たのです。それも私一人ではここまで連れてくることもできませんでした。佐藤さんという専門家が一緒にいたという偶然がいくつも重なっていたのです。

オマケ
帰りの車のなかでAさんがポツリと「オカマを見に行くというから、私てっきり山形にも変なところがあるのかと思った」といいました。バーベキューの河原に戻るまで車の中は爆笑の連続。Aさんもお腹を抱えて笑ってしまい、「あんな素敵な蔵王のお釜が見れたなんて嘘みたい」というのがやっとでした。

 
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