Aさん電車に乗る

1998年6月20日

7月11日に山形の友達たちが恒例のバーベキュー大会を開くことになり、昨年の秋に芋煮会に参加して再会を約束していたAさんもまた一緒に行くことになりました。
私はかねてより計画していた列車旅行を提案してみました。

> ところで7月11日ですが、私と2人で片道だけでも新幹線にしませんか?
> 今日大宮で聞いたけれど、前日にでも連絡をくれればOKだそうです。

上野さんが考えているより大変だと思うのです。
体がヘトヘトになってしまうかも知れないし・・・・・・。
片道だけでも珍道中です。
それでもいいの?


本気なのですね。

> 列車旅行についてすっかりその気になって調べています。
>
> 東武野田線 大宮駅
>  車椅子対応エスカレーターがあるので愛宕駅から乗車する
>  ときに駅員に連絡しておいてくれれば対応します。
>
> JR大宮駅
>  指定席は1ヶ月前から2日前までに上野駅か大宮駅または
>  東京駅で車椅子のための指定券を購入すること
>  当日は大宮駅と山形駅で駅員が対応します。
>

私、上野さんのこの熱意に負けたのではなく冒険してみたいから....。
この冒険にどんなことがあるか?どんな反応があるか?
私、やってみたい。(^^V
両親にも話しておきました。上野さん平気かしらといっていましたよ。

このようなやり取りの後Aさんは車椅子ので列車旅行に同意してくれました。
ただしAさんの知り合いで養護学校の先生のお仕事をされている佐藤さんも一緒にいって頂けるように、お願いすることになりました。
まあ全くの素人の私が介助するのはではAさんともしても不安だろうし、私も写真撮影の事をも有るので専門家として一緒に行ってもらえるように願いすることにしました。

さっそくJR大宮駅に電話して切符のことを聞いてみました。

  1. 障害者手帳で5割の割引になるのは乗車券のみで特急指定券には割引がない
    乗車券の割引の対象は障害者とその介助者で2人がそれぞれ5割の割引を受けられる。
  2. 車椅子から座席に移ることが出来る人は指定券を最寄り駅で通常の手続きで購入する
    座席に移る事が出来ない、車椅子しか利用できない人は1ヶ月前から2日前までに東京駅か大宮駅、上野駅で車椅子専用の切符を買うこと
  3. 当日発車30分前に大宮駅に行って駅員へ車椅子利用の介助を申し込む。前日までに連絡は欲しい
  4. 東武野田線は当日乗車時に大宮駅での介助を愛宕駅で申し込めば大宮駅へ連絡をしておいてくれる。

さて私達の「のびたの大冒険は」切符を買うところからはじまります。
6月20日いつものように車で柏駅へ。高島屋の駐車場へ車を入れ、高島屋の店内を使って3階のコンコースへ。土曜日ということもあって混雑している中を緑の窓口へ。この時に私もAさんの目の視線を体験したくて車椅子の脇をしゃがんで歩いてみました本当に歩いている人達が皆キリンさんの様に背が高く見えます。

Aさんの目線から見たエレベーターの中
Aさんの目線から見たエレベーターの中
立っている人は皆キリンさんのように背が高く見える

緑の窓口ではテーブルの上に時刻表が置いてありますが、立って申込用紙に記入するのに丁度良い高さのテーブルですからAさんが届くわけがありません。
そこで時刻表を手元にとって見ようとしても盗難防止のための鎖が短くて車椅子に座っている膝の上に持って来ることも出来ません。

結局私が時刻表を調べて申込用紙を記入して、Aさんはそれを持ってカウンターへ並びました。
先に並んでいる人が3人、すぐに順番が回ってきました。Aさんは障害者手帳と申込用紙を手渡すと駅員はすぐに「障害者と介助の人は乗車券が半額です」と説明してくれました。

通常の乗車券障害者割引の乗車券介助者割引の乗車券
通常の乗車券障害者割引の乗車券介助者割引の乗車券

ただし、ここでもカウンターの背が高いために車椅子に座っているAさんから見るとカウンターの中が全く見えません。駅員の顔も乗り出してもらわないと見えないため、相手の話している内容もほとんど聞きとれませんでした。

私達が立ったまま話しをするには全く問題内カウンター 申し込み用紙記入カウンターはとても背が高い Aさんの視線からみたカウンター
私達が立ったまま話しを
するには全く問題無い
カウンター
しかし車椅子からだと
とても高いカウンター
Aさんの目線から
見たカウンター

それ以外は通常購入する手続きとなんら変わりなくすぐに完了。めでたく大冒険の準備完了です。

この日はもう一つ企みがありました。
電車に乗る予行練習の為に東武野田線に乗って梅郷駅まで戻ることを提案しみたのです。
友達に車を運転して帰ってもらい、梅郷駅で拾ってもらおうというのです。さすがにここまで来てAさんも嫌だといいません。あきらめたようです。
さっそく自動販売機で私は正規の料金である280円を購入したのは良かったのですが、さきほどJRでは介助者も半額だったよな?ということで改札口に質問しに行きました。
すると自動販売機で子供料金を買ってくださいとのこと。「子供料金?」と思わず聞き返しましたが、指示通りに切符を買ってAさんは自動改札機へ向かいます。

車椅子からだとコイン投入口がちょっと高くてヒップアップしないと手が届かない
車椅子からだとコイン投入口がちょっと高くて
ヒップアップしないと手が届かない

切符を自動改札機に入れて切符は取り口に出てきて待っています。ところがAさんの車椅子は自動改札機の入り口にすっぽりはまって前に進めません。車椅子は自動改札機を通っては駄目なんですね。結局、私が切符を私が取り返して、駅員がいる改札口へまわりました。

車椅子は自動改札口を通れなかった
車椅子は自動改札口を通れなかった

駅員さんが「エスカレーターを使いますか?」と聞いてくるので思わずこちらも「は?」。「階段ではなくてエスカレーターを使いますよね」と聞かれてやっと意味がのみこめて「車椅子でそのまま乗れるのであればお願いします」と返答。
梅郷駅へ向かうということで7番線へ降りるエスカレーターへ案内されました。
そこで駅員は昇りとして動かしていたエスカレーターに鍵を差し込みエスカレーターを一旦停止させます。

駅員が昇りエスカレーターを鍵で停止させた
駅員が昇りエスカレーターを
鍵で停止させた

頭上の表示板に車椅子のマークが表示されオルゴールが流れはじめ、エスカレーターはゆっくり逆回転をしてステップの2つが平らになり自動的に一旦停止。さらに前側のステップが自動的に開きステップ3つ分が平らになって停止しました。

前側のステップが自動的に開きステップ3つ分が平らになって停止
前側のステップが自動的に
開きステップ3つ分が平ら
になって停止

この間約2分。駅員がAさんの車椅子を平らになったステップに載せて操作するとゆっくり降りだしました。スピードは通常の半分ほどです。私が平行して動いている下りエスカレーターで下まで降りてもまだ真ん中あたりをオルゴールの音と共にゆっくり降りてきます。

一番下まで降りるまでの間、駅員が前から車椅子を押さえてくれて不意に車椅子が動くことが無いようにしてくれますが、オルゴールの音とその光景を平行して動いている下りエスカレーターに乗っている人が珍しそうに見ていきます。なんでオルゴールなんて流すのでしょうかね?ゴミ収集車じゃあるまいし…・
Aさんもとても恥ずかしかったといっていました。

一番下まで到着するとまた自動的に減速して停止し、前側の車止めが自動的に解除され、Aさんが自分で車椅子を操作して降りてきました。
駅員による介助はここまでで、後は介助者として割引運賃を払っている私にバトンタッチされました。といっても駅のホームで車椅子を押すのは初めてです。
到着していた電車に乗ろうとしたところでビックリ!ホームと電車の間の隙間と段差がこんなにあるとは今まで気が付きませんでした。車椅子の後ろにある棒を踏んで前輪を持ち上げながら車内に前輪を載せて、持ち上げるように後輪を載せます。
柏駅のホームでは車椅子の人が1人で乗り降りする事は不可能でしょう。

さて車内に入ってから今度は何処に車椅子を停めるかでウロウロ。
通路に車椅子を停めると、通る人に邪魔になります。
かといって扉付近では駅に到着する度に、乗り降りの邪魔になり右に寄せたり左に寄せたり忙しそうです。

結局、車両のつなぎ目の短い座席のスペースに車椅子を置きました。
あいにく座席が2人分は空いていませんでしたからAさんは車椅子に座ったままで、私だけが座席に座りましたが、そうするとかなり離れてしまい会話が聞こえません。しばらくは車内が混んでいてたので我慢していましたが、途中で場所を移動してやっと並んで座ることが出来ました。並ぶといっても私は座席で、Aさんは入り口の広いスペースでポールを挟んで座る形ですが、これが一番会話もしやすい形でした。

梅郷駅では駅員がきちんと待機して待っていてくれましたが、柏駅とちがって電車とホームの段差もなく駅員の手を借りることもなくすぐに降りることが出来ました。
改札を通るときに駅員が「お帰りは何時ですか?」と声を掛けてくれましたが、正直に「ここで終わりです」と答えてしまいました。もし帰りに利用するなら階段を昇って下るという大仕事が待ち受けているのですが、2人しかいない梅郷駅で対応してもらえるのか聞くのを忘れてしまいました。

途中渋滞で友達の運転する車は10分後に到着して、今日の予行練習は何事もなく終わりました。次回は7月11日山形までの約3時間の長距離列車旅行です。今日の調子なら何とかなると、ささやかな自信が付きました。

 
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